【書評】「プロ野球FA宣言の闇」

これは書籍版「NHKスペシャル」!

「プロ野球はもっとこうするべし!」
「プロ野球改造計画!」

みたいな本やブログタイトルを目にしたことはありませんか?
店主はああいった類いの内容があまり好きではありません。
なぜなら「○○すべき」「○○すべし」なんていう言葉は誰でも言えると思うからです。
これらの本やブログを書いている人のほとんどが責任を伴わない立場にいる人たちです。必然、内容も客観的事実やエビデンスが伴わない薄っぺらさを感じてしまいます。
ネットやSNSを通じて、個人でいくらでも行動できる今の時代、行動を伴わないただ考えてみただけの「すべき」「すべし」論に読む価値を感じません。

そこでこの本『プロ野球FA宣言の闇』(亜紀書房)です。
この本もそんな類いの本なのだろうと思っていました。ですがさすがは「ミズノスポーツライター賞」優秀作家である中島大輔さんです。FA制度導入当時の球団側、選手会側の当事者たちに取材を重ね、なぜ有資格者の9割が使用しないような制度になったのか、問題だらけの制度が誕生した発端、そこにあった球団側の思惑、選手会側の甘い考えなどを丁寧に検証しています。映像を追加すればそのまま「NHKスペシャル」として放送できる、そんな内容の濃い一冊でした。

FA制度を語るとき、セットで語らなければいけないのが「保留制度」です。
え? なんでセットで語らなければいけないの?
そのことについても、昨年オフの祖父江大輔(中日)の契約交渉とソフトバンクからロッテにFA移籍した福田秀平の事例を比較しながら分かりやすく解説しています。
中日球団幹部の「嫌ならさっさとFA権をとれ」という冷たい発言に中日ファンの店主も当時随分腹を立てましたが、今はこの発言も一定の理解ができます(それでも他に言い様があるだろう…とは思いますが)。

また、35歳でFA宣言した結果どこの球団からも手が挙がらず「身の程知らず」などと叩かれた木村昇吾(元西武など)にFA宣言経験者から見たこの制度の問題点などを語らせ、おそらく日本で1番有名な「代理人」団野村には日本球界とMLBの違い、プロ野球界の問題点を語らせた上で、プロ野球がどこを目指すべきなのかを示してもらっているなど、あらゆる角度から日本球界のFA制度を見つめ、問題点と改善点を浮き彫りにさせています。

この本を読めば、これから迎えるNPBのストーブリーグがなぜ盛り上がらないのか、そしてNPBの進むべき未来が見えてくると思います。
そして、プロ野球の改革を唱える本を出すならば、これくらいの内容が伴っていないと恥ずかしい思いをするという、ある種の道標的な一冊だと思いました。

「プロ野球FA宣言の闇」

中島大輔
亜紀書房
1650円

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