2013年発売の本ですが最近読んだので感想を残しておきたいと思います。

文庫本の帯の一文がこの本の面白さを示唆しています。
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FAの交渉は「どうせ出るんでしょ」と退団ありきの話し合いだった。
でも、僕はずっとこれからの横浜の話をするために待っていた。
村田修一(読売ジャイアンツ)
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大分に産み落とされ、何故だか中日を応援して30年以上になる店主は「大洋ホエールズは万年Bクラス」とすり込まれて育ってきました。故に名称が「横浜ベイスターズ」に変わり、ユニフォームが明るいタテジマに替わったとて、それは大洋ホエールズの第二形態でしかなく、ベイスターズもやはり万年Bクラスが定位置のチームという存在でした。

しかし、そんなベイスターズも90年代後半には優勝争いを演じるチームに生まれ変わり、98年には38年ぶり2度目の日本一に輝きました。
日本一直後のドラフトでは地元スターの松坂大輔を抽選で外したものの、マシンガン打線の未来を担う大砲・古木克明を指名し、翌年も身長165cmながらずば抜けた俊足と強肩を誇るPL学園の田中一徳、さらに翌年には後の名球会選手となる内川聖一をそれぞれ単独1位で指名。次代を担う選手達の獲得にも余念がない、ぬかりのないチーム編成を見せ、このままベイスターズの黄金期が到来するかと思われました。しかし到来したのはプロ野球史に残る暗くて長い、低迷・暗黒期でした。

当時のベイスターズは戦略の見えない謎のトレードを連発していたように記憶しています。日本一の中心メンバーであった波留、進藤がまずは放出されましたが、本書によると権藤のあとを受けた森祇晶監督と合わなかったからだそうです。今にして思えばこれは何かの暗示だったようです。
そして大魔神佐々木はメジャーへ移籍し、極めつけが「あれが決定的だった」と本書で選手達が口を揃えて振り返った谷繁の移籍でした。
「え!? 谷繁くるの? なんで?」
当時、そんなうまい話があるはずがないと現実を受け入れられなかった中日ファンが店主です。

棚からぼた餅ならぬ「棚から名捕手」。
谷繁を獲得した中日は、ベイスターズが暗黒期に突入したのとは対照的にその後に黄金時代が訪れました。現在は川崎に在住する店主は今でも横浜スタジアム方面に足を向けて寝ていません。

ベイスターズの迷走は親会社がTBSに変わるとさらに加速しました。謎のトレードは勢いを増し、生え抜きの主力である多村と寺原(ソフトバンク)を交換したかと思えば、その寺原を山本省吾(オリックス)と交換し、そしてその山本と多村(ソフトバンク)をまた交換して呼び戻すという、マネーロンダリングならぬ謎の「選手ロンダリング」。
チームは弱くなるべくして弱くなり、ついには5年連続最下位に…輝いていた98年の栄光はどこにー。

そんなベイスターズ迷走の裏側で選手達はどんなことを考え、どんなことを思っていたのでしょうか?
「止めたバットでツーベース」で2018年 野球書店大賞を受賞した大洋ホエールズ時代からの熱狂的ファンの村瀬秀信氏が軽妙に綴っています。
DeNAに球団を買って貰えて本当によかったなと、中日ファンながら思ってしまいます。

こんな面白い本、ベイスターズファンだけに独占させるのはもったいありません。自宅にこもってやることがないプロ野球ファンは全員読みましょう。

村瀬秀信
双葉社
835円

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