【書評】「使いこなされる力。 名将たちが頼りにした、“使い勝手”の真髄とは。」

未来の中日の監督、見つかる。

今シーズン、中日ファンをざわつかせた「代打三ツ間」事件。

▼「代打三ツ間事件」とは?

森野氏は延長10回表のヤクルトの攻撃が始まる前に「10回裏攻撃があるんですけど、2アウト満塁で加藤を出すなら8番に入れた方がいいと思ったんですけどね。出す代打もいないですから、どういう意図で岡田を8番に入れたのかわからないんですけどね」と指摘。
 森野氏が指摘した通り、1-2の10回二死満塁で投手の岡田に打席が回り、代打に投手の三ツ間卓也が送られた。森野氏は「最悪の結果ですよね。これはベンチワークの責任ですから、選手のせいではないですよね」と厳しいコメント。結局、三ツ間は空振り三振に倒れ試合が終了した。”
(ショウアップナイターより)

これは森野が偶然気づいたのではありません。
森野はルールが改正されるたびにルールブックを購入しては熟読するほどのルールマニアなんだそう。それは「解説者の中で私が一番ルールに詳しい」と自負するほど。それでけではなく、いつも試合を見ながらスコアブックをつけ、現役時代と同様に投手心理、打者心理を読む努力を続けているから。だからこそベンチワークの問題にいち早く気付き、視聴者に伝えることができたのです。

野球解説者といえば有名選手にだけ与えられる天下りのような、お気軽な立場からお気軽な解説をする人たちという印象を受けますが(そうじゃない人がいたらゴメンなさい)、森野は現役時代同様に「解説として使ってもらうため」の努力を怠りません。そこに落合イズムを感じるのは店主だけでしょうか?

森野は昨シーズンまで務めた2軍打撃コーチとしても有能さを示していました。伸び悩む高橋周平を「1シーズン我慢してセカンドで使うべき」と森繁和監督に進言。森監督も我慢してセカンドで起用してレギュラーに定着すると、現在はリーグ屈指の守備力を誇る三塁手にまでなりました(もう少しホームランを打てるようにも指導して欲しかったですが……)。

指導法も野球の現場にありがちな「こうやれ」という昭和な指導(ティーチング)ではなく、なるべく答えを言わずに選手に考えさせる指導(コーチング)を実践。なんでもすぐに答えを聞きにくる若手を時には突き放し自分で考えさせるスタイルをとっていました。本書ではとにかく「自分で考えさせることが大事」だと繰り返し述べています(巨人ファンの方がいたら阿部慎之助にも教えてあげてください)。
2軍打撃コーチとして1年間指導した根尾評もなかなか興味深かったです。

骨まで染み込んだ落合イズム。
立浪からレギュラーを奪い取った力量。
ミスター3ランと言われた勝負強さ。
常に「考える」勉強熱心さ。
コーチングの重要性を理解している今時の指導法。
解説者の中で一番ルールに詳しい。

ドラゴンズの監督になる未来が見えます!
言われるがままに背番号を7回も変更したお人好しさが気になりますが、
中日の次期監督は立浪でもなく、山﨑武でもなく、森野に決まりです。
そう確信させられた一冊です。
中日ファンは読みましょう。

森野将彦
講談社
1870円

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