【感想】「打者が嫌がる投球論 投手が嫌がる打撃論」

権藤さんが考える、雄星と牧田がメジャーで打たれたシンプルな理由

この本の中で権藤さんは菊池雄星、牧田明久がメジャーで通用しなかった理由を解説しています。
菊池雄星が打たれたボールは全部低め。「『困ったら低め』は日本野球の悪癖」。
フライボール革命の影響で「低めに投げろ」はもはや危険なのだそうだ。
牧田は逆で、低めの球を上手く使えず高め一辺倒だったことがダメだったという。

この辺りの解説は全くエビデンスに基づいてはいない。プロの世界で50年飯を食ってきた権藤さんの「感覚」とでもいうべきか。その辺りが先日紹介したお股ニキ氏と対照的でとても面白い。

ちなみにそんな権藤さんは本書の中で、監督、コーチ時代に嫌だったバッターの名前を何人か挙げている。1番嫌だったのは西武の石毛宏典。次に同じく西武の辻発彦。そして巨人の篠塚和典、現役では内川聖一。
味方だったけど敵にしたら嫌だと思ったというのが近鉄時代のブライアント、横浜時代の石井琢朗、そして中日時代の大島洋平なんだとか。

とにかくファールで粘る打者が投手としてもっとも嫌で、特に石毛はその上勝負強さも兼ね備えていて本当に嫌だったとのこと。ブライアントは例外として、凄まじいスイングスピードの速さに恐ろしさを感じたそうだ。

打撃論で面白ったのはピッチャーの困らせ方の話し。
それはシンプルで、打者はインコースを振らないこと。
・バッターにインコースを捨てられるとピッチャーは困る。
・もともとインコースで勝負してくるピッチャーは少ない。
・インコースを無視する勇気が必要。
・打者はインコースにこだわると外が打てなくなる。
・清原はインコースを打って打撃を壊した。
というのが権藤さん流の考え方。

コーチ論もなかなか興味深く、強く印象に残ったのは「教えるのは技術ではなくて『戦い方』」という言葉。
例えば野茂はフォアボールが多かったけれど、「あれは最終的に走者をホームに返さなければいい、という野茂なりの戦い方」なのだという。
だからそんな時にコーチが「コントロールをよくするには」とか言って技術を教えようとするとダメなんだとか。

「ミーティングはいらない、欲しいのはコミュニケーション」
という言葉も権藤さんらしくていいなぁ、と思いました。
横浜を日本一に導いた後、山田久志ではなく権藤さんに中日を率いて欲しかったとしみじみ。

内容の1/3くらいは権藤さん流の選手育成、マネジメント術といった内容でビジネス書としても成立するように思いました。

プロ野球好きのサラリーマンは買ってそんなしな一冊です。

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