今月の一冊!「1988年のパ・リーグ」

2019年8月に読んだ野球本の中から特に面白かった1冊を紹介します!

(著者:山室寛之/出版社:新潮社/価格:1674円)

店主の感想

バブルの絶頂期であり、昭和最後の年。そして東京ドームがオープンした年。
パ・リーグでは南海・門田博光が史上最年長で40HR、本塁打と打点の二冠王を獲得。近鉄・阿波野秀幸と日本ハム・西崎幸広が「トレンディエース」と持て囃されハーラーダービーを争った。元メジャー首位打者の実績をひっさげてマドロックがロッテに加入し、中日からシーズン途中に加入した近鉄・ブライアントが猛打を振るったー

表紙のイメージからして、てっきり「10.19ロッテvs近鉄 伝説の川崎決戦!」の舞台裏を中心に据えた、1988年のパリーグを描いたノンフィクションだと思っていました。

そんなパ・リーグ愛とノスタルジーにあふれた一冊!
…ではありませんでした。

実際は、ライオンズが去って久しい福岡市にもう一度球団を誘致しようとした地元の有志たちと、念願であった球団保有を実現させたいダイエー、球団運営に限界を感じていた南海、どこかの球団が売却されたあとに目立たぬようにひっそりと「二球団目」として球団売却をしたい阪急、客も入らず施設も老朽化した川崎からの脱出を伺っていたロッテ。彼らの水面下の誘致交渉、売却交渉。そして、それらの動きを水面下でキャッチしてスクープを狙う新聞各紙ーー。

ユニフォームではなく背広を着た男達の熱い攻防の話であり、存命している関係者達の「いまだから話せる」証言を丁寧に積み重ねてたノンフィクションです。


テレビ番組に例えれば、
「プロジェクトX〜球団を買え!阪急・南海・ロッテ・ダイエー、男たちの奔走の記録〜」
「ガイアの夜明け 特別編〜福岡に球団を持ってきた男たち〜」
といった感じでしょうか。

さて、肝心のロッテvs近鉄の一戦についてですが、あんまり頁が割かれておりませんが、新しい発見がありました。当時、店主は小6だったのですが、優勝のかかった近鉄に嫌がらせのように執拗な抗議(当時は試合の時間制限があった)を繰り返した、ロッテの有藤道世監督に憤りを感じたことを覚えています。

なぜ有藤監督は近鉄の足を引っ張るような抗議をしたのか? それを有藤監督、当時の主審本人に取材を行い、その理由が明かされています。詳しくは本書を読んでみてください。
翌年の日本シリーズの加藤哲郎の舌禍事件と合わせて考えると、「この監督にしてこの選手あり」ということが窺い知れて、なかなか興味深いです(仰木監督は好きな監督さんでしたけど)。

ジャケ買い感覚で購入した本でしたが、内容はジャケットと大きく異なっていました。しかし、この本を買わなければ知らない球史の裏側に埋もれた男たちの奮闘を知ることができました。そういう意味では満足度は高いです。

最後に一言、福岡のホークスファンは、もっと稲尾和久に感謝した方がいいと思います。ホークスが福岡にやってきた理由をたどっていけば、それは稲尾和久に辿り着くからです。その理由も本書をお読みください。

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