【書評】「オリックスはなぜ優勝できたのか」(喜瀬雅則/光文社)

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読んで納得! オリックスの優勝

イチローを擁して日本一に輝いた1996年以来のリーグ優勝を果たしたオリックス。優れたスカウティングと育成力。その両輪ががっちりと噛み合った戦いぶりは、育成型球団の手本のようでもありました。

しかし、そこに至るまでの25年間は失敗と苦悩の連続でした。

伸びしろの少ない社会人選手ばかり指名するドラフト。
早すぎた契約金0円選手。
失敗ばかりのトレード戦略。
すぐに首をすげ替える監督人事。

中日ファンの店主から見ても、オリックスは長い間迷走を続けているように見えました。
それが「オリックス、なんだか変わったな」と感じたのはドラフトで吉田正尚を1位指名した2015年辺りからでした。

ちょうどこの頃、グラウンドでは見えないところで大きな変化が起こっていました。ダイエー、ソフトバンクで王貞治の薫陶を受け、楽天ではチーム統括本部長として日本一に導いた加藤康幸が球団編成のトップに立ち、球会の寝業師・根本睦夫の下で学び、ダイエー、ロッテで要職に就いてきた瀬戸山隆三が球団本部長に就いたのです。
前者は「スカウト革命」を起こし、後者はキャンプ地の変更と2軍の練習環境を整備。すぐに成果はでなかったものの、二人が蒔いた種が2021年のリーグ優勝に繋がったのでした。
店主が何となく感じた変化の裏では実際にこういったことが起こっていたのです。読んでいて納得しました。

「瀬戸山が築いた土台、加藤が獲ってきた好選手。これを中島という指揮官が上手く活用した」
オリックスが優勝した要因を端的に説明するとこうなります。

親会社の企業体質ゆえ、短期間での成果を求めるがために近視眼的なチーム作りを繰り返し、そして長きにわたって低迷してきたオリックスバファローズ。しかし、加藤と瀬戸山が5年先を見据えてチームを作り、そこに中嶋聡という優秀な指揮官が掛け合わされたことで、四半世紀ぶりの優勝という果実を手にすることができました。

しかし、その「近視眼的なチーム作り」ゆえ、成果を見届けることなくオリックスは加藤と瀬戸山をすでに球団から追い出してしまっています。次の優勝がまた四半世紀後とならないように、二人が残した遺産を大事にして欲しいと願わずにいられません。
ここから新しい歴史が始まるのか、歴史は繰り返すのか。来季のオリックスが楽しみです。

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  1. 2021年 12月 31日

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