中日ファンの耳に残る名調子!

「郭はもう泣いています」
(1988年の星野政権初優勝の試合の最後の場面)

「こんな試合は今まで見たことない!」
(巨人・斎藤にノーヒットノーラン寸前から落合がサヨナラスリーランを打った時)

中日戦のテレビ放送を思い返すとき耳に蘇る声はいつもこの人です。長らく東海テレビのスポーツアナウンサーを務めてきた吉村功さん。

*そういえば思い出したくもない「10.8決戦」の実況もこの方でした…

吉村アナが2017年に上梓された『アナウンサーは足で喋る』(桜山社)を読みました。
(この本の存在自体を知らず神保町の本屋で発見しました。さすがは古本の町。野球本の品揃えが違います!)

そういえばプロ野球中継が地上波から追いやられて以来、吉村アナの名調子も耳にする機会がなくなっていたことに気づきました。本書によると定年退職後はしばらく東海テレビに残り、2005年からは岐阜放送に活躍の場を移されたそうです。岐阜では高校野球放送やラジオのメインパーソナリティなどを務めているほか、これはwikipediaからの情報ですが岐阜経済大学経営学部情報メディア学科で非常勤講師も務められているそうです。恩年79歳。お元気そうで何よりです。

▼今年5月に岐阜で放送された高木守道さんを偲ぶローカル番組での吉村さんです。変わらぬ語り口が嬉しくなります。

この本では吉村アナの生い立ちから東海テレビでアナウンサーになるまで、これまでの失敗談や思い出話などが綴られています。野球だけに留まらずマラソンやゴルフなどの実況についても触れられていますが、やはり面白いのは野球、ドラゴンズにまつわるエピソードです。

例えばそれは、解説者では意外にも権藤博と一番相性が悪かった(怖かった)とか、現役時代に最も近寄り難かったのは谷沢健一だったとか(記者に紙コップや水を投げつける嫌なやつだったそうですが引退後の関係は良好だそうです)。
江藤慎一もなかなか怖かったそうなのですが、キャンプ中に旅館の部屋を尋ねると「おならの研究をしている」と打ち明けられ、「おならをして素早く瓶に詰めにするんですよ。そしてマッチで火を付ける。これがね、燃えるんですよ」というエピソードには笑ってしまいました。

吉村アナは星野仙一、落合博満という中日の二大カリスマに信頼されたアナウンサーでした。
星野の新人時代、初めてインタビューした時の印象を次のように綴っています。
「背中がぞくっとする狂気を感じました」
「この男にはあまり近づかない方が無難かなと正直思いました」

そんな吉村アナは、星野の生涯最高のピッチングを巨人のV10を阻んだ年のマジック3で迎えたヤクルトとの最終回のピッチングだったと振り返っています。アウトコース一辺倒ながら針の穴を通す凄いボール、凄いコントロールだったと。
(補足:翌日からはナゴヤ球場での二連戦が控えマジック3だと地元で自力優勝ができないばかりか、その後は後楽園での巨人戦だったため、このヤクルト戦は絶対に負けられない試合だでした)

実は星野もまた、生前最後の出演となったCBCのラジオの中で吉村アナと同じ場面を生涯最高のピッチングに挙げていました。

ちなみに2005年に訪れた吉村アナの地上波放送最後の実況中継のゲストに訪れたのは星野でした。

落合とのエピソードも吉村さんならではです。
忌まわしき10.8決戦の試合後、ビールかけ終わりに同じホテルに泊まっていた吉村アナの部屋に夜中の3時に落合が訪ねてきたそうです。
缶ビールを飲みながらほろ酔いの落合は「勝ってよかったよ。もし負けていたら、俺、巨人辞めるつもりだったよ」と漏らしたそうです。
あの落合がここまで無防備に本音を吐露するとは、吉村アナとの良好な関係が窺い知れます。そして本書を通じて暴露されているわけですが。

ここまで書いてきてあれですが、この本で1番衝撃を受けたのは「ドラHOTプラス」の初代アシスタントが渡瀬マキ(リンドバーグのヴォーカル)だったことです(笑)。

中日ファンであれば、吉村アナのあの語り口調を思い出しながら「俺も歳を取ったな」と感傷に浸りながら一気に読めると思います。
ぜひ読んでみてください(但し、中日ファンに限る)。

「アナウンサーは足で喋る」(2017/4/28)
吉村功
桜山社
1650円

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