2019年6月に読んだ野球本の中から特に面白かった1冊を紹介します!
(著者:別冊宝島編集部/出版社:宝島社/価格:1620円)
店主の感想
今までありそうでなかった? イチローを知る人たちが語るイチローの実像。イチローを語るのはオリックス時代の先輩やWBCのチームメイト、イチローの球界の同級生たち、父親、高校時代の監督、球界のレジェンドOB、新聞記者、ドラマの演出家など。彼らに話を聞くことで、様々な角度からイチローを知ることができる一冊です。
とにかく面白かったのですが、野球界だけにとどまらず、イチローがかつてスペシャル版に一度だけ登場したTVドラマ「古畑任三郎」の演出家にまで話を聞いているなど、イチローを語らせる人選の良さが光りました。あとは引退会見からこの短時間でよくぞ単行本に仕上げたなという、スピード感にも脱帽です。
店主はこれまで、同時代に活躍したイチローと松井秀喜を無意識のうちに比較してきたように思います。選手としての実績はもちろんイチローに軍配が上がるのですが、調子が悪くてもマスコミに対して誠実に受け答えをしてきた松井に対して、イチローの態度、振る舞いは時に不遜で傲慢に映り、「人間」としては圧倒的に松井秀喜に軍配が上がるように思っていました。はっきり言うとイチローのことはずっと「野球のうまいイヤな野郎」だと思っていました。
しかし、ヤンキース移籍あたりから明らかに表情が柔和になりました。反して成績は下降線をたどり、かつて当たり前のように残してきた打率.300という成績も残せなくなりました。そして試合出場さえもままならなくなっていった選手生活の晩年ー
彼も人並みに衰え、苦しみ、悩み、もがいているのだなと分かり、初めてイチローに人間味を感じました。そして、ずっとそうしたかったかのように、店主も一生懸命にイチローを応援するようになっていました。
本書を読むにつけ、イチローがこれまで続けてきた圧倒的な努力、プロ意識の高さに改めて敬服しました。神がイチローに与えた一番の才能は「努力を続ける才能」だったのではないでしょうか?
最後に本書で紹介されている、オリックス時代の先輩・高橋智が語る次のエピソードがイチローがイチローたる所以を物語っているように思いますので紹介させて頂きます。
========================
いまでも鮮明に記憶に残っている。イチローが200安打を記録した1994年9月20日のことだ。
ナイターを終えた高橋は外出に出かけ、門限時間をとっくに過ぎた真夜中に選手寮へ帰った。聞こえたきたのは、リズムよく繰り返される乾いた打球音だった。
「『こんな夜中に誰だろう?』と思って室内練習場をのぞいたら、イチローが1人、バッティング練習をしていたんです。200安打を打ったその日の夜ですよ。信じられませんでした。『ああ、なるほどな。だからイチローはすごいのか』と思いましたね」
ケージの中は、少なくとも300球はあるのではないかというほどの無数の白球で埋め尽くされていた。
========================
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。