■店主推薦本(5)

「内川家」

・著者:赤澤竜也
・出版社:飛鳥新社
・価格:1300円

店主の感想

いまやプロ野球を代表する打者となった福岡ソフトバンクホークスの内川聖一選手。店主の同郷、大分県の英雄とあって、それなりに内川選手のバックボーンなどは知ったつもりでいたましたが、ここまでの歩みの裏にはこんなに素敵な「家族の絆」があったんですね。店主も読んでいて何度かうるっと来てしまいました。

以下、簡単にですが内容を紹介します。

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「女が家を空けるとは何事だ!」というような、絵に描いた九州男児だった父の一寛。今の時代なら問題になるようなスパルタ指導は「野球の鬼」と言えるほど。しかし、その分だけあって赴任先の国東高校、大分工業を次々と野球強豪校へと育てていきました。

聖一、弟の洋平も大きくなると父が指導する大分工業野球部の門を叩きます。内川家の夢は「家族で甲子園!」。しかし、聖一高校3年の夏、惜しくも決勝で敗れ甲子園出場はなりませんでした。その後、聖一はプロ野球の世界へ、洋平は東海大学へ進んでいきました。
二人の息子が巣立ったあと一寛の心にはぽっかりと穴が空いてしまいます。「あとのオレには何が残っているのだろう、野球を通して何ができるのだろう」と。

そんなとき、一寛の指導に対して保護者から匿名で苦情が入ります。そこから一寛の気力、体力が落ち始め、更年期障害からくる鬱病を患ってしまいます。「怖いんや、怖いんや」と電話も取ることができず、家の雨戸を閉め切ったまま閉じこもるようになります。妻の和美はつきっきりで看病しつつ、万一に備えて家中の刃物を隠したと言います。

夏休みに帰省した弟の洋平は、変わり果てたかつての「野球の鬼」の姿に「オヤジが…オヤジが壊れた」と涙を流します。
その後、和美の献身的な看病と聖一が暮らす横浜への転地療法などによりどうにか快方に向かいますが、「ボールを見るのも嫌だ。野球部のない学校へ行きたい」との思いから、一寛は県立の支援学校へと赴任する事になりました。

一寛は新しい赴任先の支援学校で戸惑います。今までは子ども達が上手くできないときなどは「厳しく指導」していればよかったものの、支援学校では知的障害を持つ子ども、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害を持つ子ども達が相手です。ここで一寛は同僚教師達に教えを請い、これまでの厳しさ一辺倒だった監督時代とは正反対の指導、教育を学んだのでした。

聖一はプロ入り後、自慢だった守備でプロの壁にぶち当たります。性格が真面目な聖一はいつしか追い込まれ、ボールがまともに投げられなくなる「イップス」になってしまいます。野球教室では「キャッチボールは野球の基本」と子ども達に教えながら、そのキャッチボールさえ満足にできない自分に思い悩む日々を送るのでした。

あるとき、一寛は和美と横浜スタジアムへ息子の勇姿を見に行きます。しかし、その試合でも聖一は何でもないゴロをエラーするなど、二つのエラーを犯し試合途中で交代させられてしまいます。試合後、聖一のマンションを訪れた二人は試合のことは触れないでおこうと話します。しかし、食事の途中で嗚咽を漏らし、声にならない声で「情けない……」と絞り出す聖一の姿に和美と一寛の二人も涙をこぼしたのでした。

それから5年後の2009年、聖一はWBC日本代表に選ばれ韓国と世界一をかけて決勝を戦いました。この日の聖一のポジションはレフト。5回裏に同点に追いつかれたあと、相手打者の打球がレフト線を襲います。聖一はまるで内野手の動きのようにこのボールに猛然と突っ込み、逆シングルでワンバンドキャッチするとすぐさまセカンドへ送球。間一髪でバッターランナーをアウトにし、日本のピンチを救ったのでした。後逸すれば日本中から非難を浴びたであろうプレー。しかし、聖一は迷わず突っ込んだのでした。

このプレーが、野球から離れいてた一寛の心に火をつけました。
「聖一があれだけがんばっている。もう一回ユニフォームを着てみよう。やればできるんじゃないか」

同年4月、一寛は県立情報科学高校に赴任し野球部の監督となります。一寛はかつての厳しいだけの監督ではなくなっていました。「失敗したときに『あぁ、ごめんな』と生徒に平気で言える監督になりたい」そんな風に考えられるようになった一寛は息子たちから見ても「親父、変わったな」と思えるほどに穏やかな監督になっていました。

2年後、大躍進を見せた情報科学高校は秋の大分大会を制すると選抜大会出場をかけた九州大会でも初戦を突破し、甲子園出場に近づきます。スタンドにはそんな一寛の姿を見守る、和美、聖一、妻の翼、弟の洋平の姿がありましたー。

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もっともっと書きたいこと、皆さんに紹介したいエピソードがあるのですが、続きは本書を読んでいただきたいです。

野球に興味がない方でも(興味がなければわざわざこのサイトに来ているとも思えませんが)、ある家族の絆を描いた物語として十分に楽しめる内容だと思います!

 

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