【書評】「現役引退――プロ野球名選手『最後の1年』」

「現役引退――プロ野球名選手『最後の1年』」の表紙

現役最後の1年に見る、男達の生き様

東京ドームで原辰徳が大野豊から放ったホームラン。「また会いましょう」と言い残してユニフォームを脱いだ古田敦也——。
こういった有名選手の「現役最後の試合」や「引退の挨拶」のシーンは覚えているプロ野球ファンも多いと思います。しかし「現役最後のシーズン」となると、有名選手といえども、どんなシーズンを過ごしていたかまでを思い出すことができません(まぁそりゃ引退を決意したシーズンなんだから華やかな成績は残していないとは思いますが)。中日ファンであるはずの店主も、あんなに好きだった山本昌や立浪の最後の1年……どんな感じだったか思い出すことができません。

なるほど「有名選手達の現役最後の1年を振り返る」という切り口、面白いですね。

引退にはいくつかの種類があると思います。王貞治のように「まだできる」の声を聞きつつも潔く引退するケース。野村克也のように現役に固執しながらもどこからも声がかからず引退に追い込まれるケース。そして、秋山幸二のように体がボロボロになって引退するケース。

秋山で思い出すのは清原とのAK砲で西武の黄金期を支えていた姿。そして日本シリーズでのバク転、一発ホームランと鉄壁の守備。そしてとにかくカッコよかったこと。
そんな秋山の全盛期の記録を振り返ると「そんなに凄かったのか……」と今さらながら驚かされます。下にまとめた記録を見てください。柳田悠岐や山田哲人さえも霞むほどの、もうほとんど化け物です。流石はメジャーに一番近かった男と言われただけのことはあります。

・落合博満も松井秀喜も達成したことがない3年連続40本塁打
・王貞治に次ぐ9年連続30本塁打以上
・NPB史上唯一の30本塁打・50盗塁を達成
・日本記録となる19年連続オールスターファン投票選出
・833試合連続出場

そんな化け物もダイエー移籍後は成績が下降し始め、やがて現役最後のシーズンが訪れます。中日ファンの店主に彼の最後のシーズンの記憶があるはずもありません。しかし「『メジャーに一番近い男』の卒業」の章を読むと、どんなシーズンを過ごし、どのようにして身を引くことを決意したのかがよく分かります。ボロボロになりながらも潔く身を引き、「勝者のメンタリティ」をチームに残してユニフォームを脱いだのです。秋山は最後までかっこよかったんですね。

全盛期の活躍が眩しすぎた渡辺久信、駒田徳広、落合博満の最後の1年。読みながら当時の記憶との照合が行われ、90年代後半の「あの頃のプロ野球」を懐かしく思い出しました。40代以上のプロ野球ファンならば哀愁に浸れる一冊だと思います。

中溝康隆
新潮社
880円(Kindle版:880円)

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