氏原英明
新潮新書
792円(Kindle 792円)
選手生命を犠牲にしてまで甲子園に出ることに意味はあるのか?「負けたら終わり」の高校野球の現場で進む、斬新な取り組みをルポ。
2019年夏、岩手県大会の決勝で大船渡高校のエース、佐々木朗希が登板を回避したことは、賛否の論議を呼んだ。それは突き詰めると、「甲子園にすべてを捧げる」か「将来の可能性を取るか」の選択に他ならない。「負けたら終わり」のトーナメント方式の中で、どう選手を守り、成長させていくのか。球数制限、丸坊主の廃止、科学的なトレーニングの導入など、新たな取り組みを始めた当事者たちの姿を追う。
【目次】
第1章 新潟県高野連はなぜ、球数制限導入を決断したのか
日本高野連の反対も織り込み済みで、独自の「球数制限」導入に踏み切った新潟県高野連。その決断は、県が独自に進めてきた野球界改革の延長線上にあった。
第2章 「甲子園」に取り憑かれた鬼軍曹の改心
「伊丹一のワル」坂本勇人を育て上げ、プロに送り込んだ金沢成奉監督。厳しい指導で知られた彼が、コロナ禍で甲子園を失い、悩んだ果てに見出した新たな指導法とは。
第3章 「プロでは大成しない」甲子園強豪校の代替わり
前監督が甲子園の史上最多勝利記録を持つ智弁和歌山は、ひそかに「選手がプロで大成しない学校」と言われてきた。後を引き継いだ元ドラ1プロ、中谷仁監督の挑戦。
第4章 メジャー帰りのトレーナーと進学校がタッグを組んだ理由
一日わずか50分。広島の武田高校は、短い練習時間に「考える時間」をプラスすることで、チーム力を向上させている。それを支えるのは、プロも一目置くトレーナーのノウハウだ。
第5章 激戦区の公立校からはじまった「球数制限」と「リーグ戦」
「複数投手制」の徹底で成績を上昇させた神奈川の県立高。私立優勢の大阪で、公立高が組んで立ち上げた「リーグ戦」。出発点にはどちらも、ある中南米帰りの男の姿があった。
第6章 丸坊主を廃止した二つの私立強豪校
菊池雄星と大谷翔平を生んだ花巻東。甲子園8度出場を誇る新潟明訓。両校は、ほぼ時を同じくして「丸坊主」をやめた。その決断に至るまでの、それぞれのロジック。
第7章 サッカー界「育成のカリスマ」の試みから見えるもの
時に真逆に見えるほど文化が違うサッカーと野球。本格的な設備を擁する民間クラブを立ち上げたサッカー界「育成のカリスマ」の言葉が、野球界の課題を照射する。
第8章 テクノロジーが、選手を強くする
データの活用なくして、選手の成長はありえない。その流れはプロのみならず、高校野球界にも及んでいる。テクノロジーを味方につけて進化を続ける高校生投手の「異次元の言葉」。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。