【書評】「監督からのラストレター」

監督からのラストレター

全国43校の監督たちが贈る餞の言葉、人生のエール!

「忖度なし!」の野球書店ですが、店主がこの本の企画に携わっていることもあり忖度がないとは言い切れません(笑)。いえ、店主が携わっていなくてもなかなか面白い一冊になっています!

帯の裏には手紙から抜粋されたこんな印象的な言葉が並んでいます。これを読むだけでもどんな内容の本なのか、伝わるのではないかと思います。

「お前らの人生、まだ1回裏」(おかやま山陽 堤尚彦)
「よくやった。君たちと一緒にやれてよかった」(前橋育英監督 荒井直樹)
「君たちは、”可哀想な3年生”ではな
。”たくましくなった3年生”だ」(慶應義塾監督 森林貴彦)
「辛い経験をするほど、人は優しく、強くなれる。意味のない経験なんてない」(広陵監督 中井哲之)

甲子園があるから一生懸命頑張れる。
甲子園があるから厳しい練習も耐えられる。

コロナで甲子園が奪われるまで多くの指導者達はそんな風に考えていたかもしれません。
いや、もしかしたら3年生たち自身もそう思っていたかもしれません。
しかし、甲子園という目標の舞台がなくなっても、多くの3年生たちは最後まで熱く高校野球をやりきりました。
その姿に胸を打たれた監督も多かったようです。

前橋育英の荒井直樹監督は、独自大会の最後の試合で敗れたあとのことを手紙の中でこう綴っています。

君たちの一生懸命な姿をずっと見ていたので、試合後はこみ上げてくるものがありました。全国制覇した時でも流さなかった涙を抑えられませんでした。

静岡高校の栗林俊輔監督の手紙にはメンバー外の3年生の野球ノートの内容が書かれていました。

「自分たちが先輩達にしてもらったように、後輩達に甲子園を経験させてあげることができなかった。だからせめて代替大会を勝ち上がることで、1試合でも多く公式戦を戦い、夏に勝ち上がるときの雰囲気や、大会に向けての準備のしかたについても経験を積み、秋季大会、さらには来年の夏に生かしてほしい」「それが上級生として後輩達にしてあげられる最後の仕事」。こう綴られていました。胸が震えました。

西尾東高校の寺澤康明監督は休校明けの最初の練習のことをこう綴っています。

学校が再開されてからの最初の練習を忘れることは一生ないでしょう。しっかり動けていて、ノックに食らいつく君たちの姿に涙が滲んでくるのがわかりました。
(中略)
大会がどうこうよりも元気にグラウンドで一緒にプレーできることが、うれしくてうれしくて仕方がありませんでした。

市立和歌山の半田真一監督は教え子達にこんなエールを綴っています。

春からは新しい道を進むことになりますが、ここまでの課程を大切にして、立派な大人になっていってください。そして、自分たちの代は新型コロナで甲子園がなくなって……と、大人になって笑いながらお酒を飲める日が来てくれたらと思っています。

この本には、コロナという見えない敵と戦った全ての高校球児たちへ送る、全国43校の監督からの餞の言葉、人生のエールが詰まっています。
多くの球児たちがこの先の人生で何度もこの本を開き、恩師の言葉を思い出す。彼らの人生に寄り添う一冊になってくれればと思います。

タイムリー編集部
インプレス
1320円

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