【感想】「ホークス3軍はなぜ成功したのか? 〜才能を見抜き、開花させる育成力〜」

千賀と大竹を獲得できた理由

3年連続日本一のソフトバンクはなぜ強いのか?!

その要因の一つと考えられるのが「スカウティング」と「育成」。
それを物語る千賀滉大と大竹耕太郎にまつわる2つのエピソードが本書「ホークス3軍はなぜ成功したのか? 〜才能を見抜き、開花させる育成力〜」の中にありました。

千賀は愛知県のスポーツ用品店の店主がソフトバンクのスカウトに「いい選手がいる」と紹介してプロへの橋渡しをしたことはよく知られていると思います。
しかし、実はソフトバンクに紹介する前に別の2球団のスカウトに千賀を紹介していたのです。

まず最初に連絡したのは東北楽天のスカウト。
しかし、楽天のスカウトはブルペンで投げる千賀を見て言いました。
「ちょっとこれは育成でも無理です」

次に連絡を入れたのはロッテのスカウト。
しかし、ロッテのスカウトはブルペンで投げる千賀の姿を見て言いました。
「まぁ、大学か社会人に行ってから、ですね」

最後に連絡をしたのがソフトバンクのスカウト。
千賀の投球を見たチーフスカウトの永山は即座に球団に連絡を入れました。
「すごいのがいました!」

持ち帰った映像を見た瞬間、編成TOPの小川はスポーツ用品店の店主に電話を入れました。
「ウチが育成で千賀君、獲るよ」ー

2球団が獲得を見送った無名の高校生をソフトバンクはなぜ獲得したのでしょうか?
それは翌年から3軍を創設することになっていたからでした。

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スカウト網から漏れてしまいがちな、見逃しがちなタレントたちを、ソフトバンクはあえて、丹念に調査することで、その「伸びしろ」を測り、その「成長予想」を立てた上で「3軍」で育てるという〝新分野〟に、乗り出していったのだ。
(本文より)
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早稲田大3、4年時は故障に苦しんだものの2年時は開幕投手を務めるなど名門のエースを務めた大竹耕太郎。
ドラフト時点でのプロからの評価は低かったものの、彼自身は育成契約でもプロに行きたかったそうです。
しかし名門大学故に「育成でのプロ入団は認めない」という無形の圧力を受け、プロ志望届には「育成での指名不可」として提出しました。
他球団のスカウトも「早大だから育成では来ない。エリートの選手だから育成は選ばない」と考えて手を引きました。
しかし、ソフトバンクのスカウトはそんな固定観念には囚われませんでした。

「ウチに来たら、伸びるよ。それだけの環境はあるよ。あとは自分の努力次第だよ」

そんな自信に満ちた言葉を大竹に伝えられたのは、多くの育成選手を1軍戦力に育て上げてきた実績と総工費60億をかけて育成の一大拠点を作り上げていたから。
果たして大竹は大学を説得し、自らの意思で育成指名契約を受け入れ、そして早々に支配下登録を勝ち取りました。

おっと、自分が中日ファンであることも忘れてソフトバンクの「スカウティング」と「育成」について熱く綴ってしまいました(中日のスカウティングと育成に不満が溜まっているからにほかありません)。

ちなみにそんな中日は、地元のスーパースター・鈴木一郎をドラフトで取り逃して以来、
「もう絶対に地元のスター候補は取り逃がさない!!」
そんな気概で「地元第一主義」というローカル新聞社的発想でドラフト戦線に臨んでいたにもかかわらず、またしても千賀という侍ジャパンのエースを取り逃していたという事実が歴史から掘り返されてしまいました。

「中日もさっさと3軍を作るべき!」
店主も長年そんな妄想を抱いていましたが、事はそんなに簡単な話ではないことを本書を読んで理解できました。
そこには育成拠点というハードの建設、それを実現させるための数十億円の投資、チームの長期的なビジョン、現場とフロントの相互理解を促進する人事といった中日球団には存在しないあらゆることが必要となるからです。

中日ファンの店主も楽しく読める「ホークス3軍はなぜ成功したのか? 〜才能を見抜き、開花させる育成力〜」。
ソフトバンクファン以外のプロ野球ファンにもおすすめです。

喜瀬雅則
光文社
1100円

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