【書評】「オレたちのプロ野球ニュース ――野球報道に革命を起こした者たち」

長谷川晶一「オレたちのプロ野球ニュース」

大分県民の憧れだった『プロ野球ニュース』

店主の生まれ故郷大分では放送されていなかった『プロ野球ニュース』(何せ民放が二局しか映りませんでしたから)。
しかしながら『プロ野球ニュース』なるものの存在も佐々木信也氏の存在も『がんばれタブチくん』や、父が時折どこかから借りてくる『プロ野球珍プレー!好プレー!』のビデオを見て知っていました。そのソフトな語り口から、フジテレビのアナウンサーだと信じて疑いませんでしたが。

中学1年の頃、父親が海を挟んだ隣県・愛媛県のテレビ電波を傍受できる(?)怪しいテレビアンテナを設置したことで、番組開始13年目の同番組をようやく見ることができるようになりました。その頃のMCは野崎昌一アナウンサーになっていましたが。とんねるずの貴さんがモノマネしていた別所毅彦さんを見て「うわ!本物だ!」と感動したことをよく覚えています。

中日ファンの店主にとって、巨人戦以外の試合もたっぷり扱ってくれるこの番組の存在は本当にありがたいものでした。同じように感謝していた全国のプロ野球ファン、この番組が見たくて怪しいアンテナを屋根の上に立てた大分県民がどれほどいたことでしょうか。

そんな番組も2001年には地上波から姿を消してしまいます。当時、店主も社会人になり東京で働いていましたが、大分で感じたような「ありがたみ」みたいなものは薄れていました。
K-1やPRIDEといった格闘技人気、中田英寿の海外サッカー挑戦、野球だけを見ても野茂英雄や伊良部秀輝をはじめ国内トップ選手達が続々と海を渡り活躍する時代。『プロ野球ニュース』という看板の下でこれらを扱うことの違和感や限界も視聴者として感じていました。番組自体に古くささやオワコン感みたいなものがあったことも否めません。ですので、21世紀の初めの年に『プロ野球ニュース』が地上波での役目を終えたことは必然だったと思います(本書で最終回の様子が紹介されていますが実にあっさりしていて驚きます)。

後続番組である『すぽると』は、前述のあらゆるスポーツを放送するスタイルで、前番組が晩年に漂わせていた違和感を払拭しました。プロ野球に割かれる時間は減ったもののスポーツ全体としての情報はむしろ充実していたと思います。しかし、いつしかこの番組も終了してしまいました。

今となっては同時間帯に同局がどんな番組をやっているのか? スポーツ番組を放送しているのか? 店主はそれすらも知りません。寝る前にチャンネルを8に合わせるという全国のプロ野球ファン、スポーツファンの視聴習慣もリセットされてしまったのではないかと思います。

時代と共に番組は姿を変え、あるいは終了してしまうのは仕方がないと思います。しかし、1976年の放送開始から佐々木氏をはじめ、この本に登場する多くの番組関係者達が視聴者との間に積み重ねてきた信頼と、植え付けてきた習慣みたいなものまでが壊されてしまった気がして、それが残念でなりません。

それにしても、番組絶頂期の1988年3月に突如番組降板を告げられた初代キャスター佐々木氏には同情してしまいます(詳細は本書でどうぞ)。というのも、彼は現役時代も似たような体験をしていたからです。この本の著者でもある長谷川晶一氏の本『最弱球団 高橋ユニオンズ青春期』に詳しいですが、佐々木氏は稲尾和久と新人王を争うほど活躍したユニオンズ唯一の若手スター選手だったのですが、球団が吸収合併された後に当時の西本幸雄監督に「背の低い選手は要らない」という理不尽な理由で解雇されてしまったのでした。後年、その西本とキャスターと解説者という間柄でこの番組で共演するのですから面白いものです。

最後に、店主も著者の長谷川氏と同感です。
佐々木氏がこの番組を通してプロ野球界に遺した功績の大きさ、それはこの本を読めばよく分かります。佐々木信也さんこそ、野球殿堂入りに相応しいと思います!

長谷川晶一
新潮社
781円

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