野球書店推薦本「野村克也からの手紙」

「野村克也からの手紙」

■店主推薦本(12)

「野村克也からの手紙」

(著者:野村克也/出版社:ベースボール・マガジン社/価格:1512円)

店主の感想

ノムさん流「非難」は期待の表れ!

齢83にしてハイペースで本を書き続けるノムさん(本人は書いてない説あり)。手元調べだけでも今年に入って11冊の著書が出版されており、今月もこのあと5冊出版予定というから驚きです。

しかし、書店の野球コーナーに並ぶノムさんの著書の数々……人は選択肢が多くなるとそこから一つを選べないそうです。店主も正直「どれもどうせ同じような本でしょ?」と思ってしまい、なかなか本に手が伸びません。

しかし、この『野村克也からの手紙』はちょっと構成が面白いです。ノムさんがかつての教え子や現役の気になる選手、かつてのライバル、恩師、家族らに手紙(というかほとんど遺書)を綴るという構成になっているのです。

ノムさんが手紙を綴った相手はこんな顔ぶれです。

◎リーダへ(助言の手紙)
宮本慎也(ヘッドコーチを務める君へ――野球も人生も状況判断)
稲葉篤紀(侍ジャパン監督を務める君へ――監督が選手を引っ張る術は、言葉しかない)
伊藤智仁(独立リーグ監督を務める君へ――自分の野球観を浸透させろ )

◎挑戦者へ(激励の手紙)
田中将大(30歳になる君へ、実るほど――頭を垂れる稲穂かな)
大谷翔平(未知の世界を行く君へ――大谷、神の子、不思議の子。後輩たちのよりよい見本たれ)
甲斐拓也(名捕手へ、成長途上の君へ――感謝の気持ちを持つ人間は、強い)
清宮幸太郎(プロ1年目の君へ――自分に合うものを見つけるのは、自分自身)

◎個性派へ(忠告の手紙)
江本孟紀(あまのじゃくな君へ――開き直りはチャレンジ)
門田博光(頑固な“クソ努力家”の君へ――たまには別の道を行くのも、いいものだ)
江夏豊(寂しがりの君へ――信は万物の基を成す)
古田敦也(第二、第三の人生を歩む君へ――人はジャンプするとき、いっぺんヒザを曲げ、体を沈み込ませる)
新庄剛志(宇宙人の君へ――あとはもう少し、努力してもよかったな)

◎恩師、友へ(学んだことへのお礼の手紙)
鶴岡一人(恩師の貴方へ――感謝と憎しみ、正直、五分五分なのです)
杉浦忠(エースの君へ――生きていれば、もっと話しができたのに)
稲尾和久(同志の君へ――サイとの対戦は、打っても打たなくても、楽しかった)
長嶋茂雄(天才の君へ――今でもお前がひまわりで、俺は月見草)
王貞治(ライバルの君へーーやはり神様は、努力する人間を見ている)

◎家族へ(愛の手紙)
母ちゃん(育ててくれたあなたにーー母ちゃんもまた、月見草)
克則(大切な息子にーー育成とは、自信を育てること)
沙知代(愛する妻にーーなんとかなるわよ、いい言葉だな)

この中で特に印象深い遺書、いや手紙は宮本慎也、古田敦也、甲斐拓也に宛てた3通の手紙です。

宮本にはヤクルトのコーチ就任が決まった時にわざわざ自宅まで挨拶に訪れた律儀で礼儀をわきまえた人間性と、「自衛隊」と呼ばれ”守るだけ”の選手だったにも関わらず2000本安打を達成した本人の努力を賞賛。また「コイツが監督になればいいな」と思える唯一の人物と、宮本への賞賛が止まりません。

しかし、

「君は悪いことは悪い、とはっきり言う。自分の心の内にグッとしまい込み、咀嚼して柔らかい言葉に替えることができないし、しない」

「相手にとって耳の痛いこと、厳しいことでも直球で言葉にするから、相手が傷ついているのに気がつかない」

「君の言動は時に敵も作ってしまう」

「人間的には『キツイ』」

などとなかなか手厳しい言葉も続きます。

しかし、それはノムさんが宮本に期待しているからだろうことは想像に難しくありません。
ノムさんは「『無視、賞賛、非難』の三段階で人は試される」と常々口にしています。宮本がノムさんに認められるまであと一歩ということなのでしょう。頑張れ宮本!

宮本への「非難」が期待の裏返しであるならば、古田への「非難」は悪口レベルに聞こえます。
明晰な頭脳と捕手として必要な分析力、観察力、洞察力、記憶力、判断力という「5つの力」を評価しながらも、
「チームメイトと飲みに行った時、古田が一番高給取りのなのに広沢と池山ばかりが支払っていた。」
「古田は財布を出そうとする素振りしないらしい。そういうところが監督としてうまくいかなかった一因だ」
と半ば言いがかりのような言葉で古田の性格を非難。

人におごるのが嫌だったら、一緒に行かなければいい。

と、とてもごもっともなアドバイスまで送っています。

そして、最終的に「お前は監督よりも解説者に向いている」とバッサリ。古田はノムさんの非難を乗り越えることができるのでしょうか…

最後に甲斐。おじいちゃんと孫くらいの年齢差があり、ノムさんが甲斐に手紙を書くとことが少し意外に思えます。テレビで対談したことがきっかけだそうですが、
・共にホークスのキャッチャー
・共に母子家庭
・共に苦労人(テスト生と育成契約から這い上がった)
・拓也と克也って名前が似てる

ということもあるそうで、ノムさんはとても甲斐に目をかけているようです(最後の理由w)。

中でも「お母さんを楽にしてあげたい」という今どき珍しい甲斐の親に対する感謝の気持ちを気に入っているようです。

しかし、手紙の中で甲斐に対する非難が見当たらないあたり、ノムさん的には「非難するステージまで達していない」ということなのでしょう。甲斐、これからだぞ!

ノムさんが綴った20通の手紙、読みやすく、内容も面白いです。
プロ野球好きにお父様達にぜひ読んでいただきたい一冊です。

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