井上幸太
東京ニュース通信社
1650円
短期間で全国の強豪へと導いた監督の苦心の指導者生活を紐解く
東北勢初、仙台育英の全国優勝で幕を閉じた第104回全国高校野球選手権。
その決勝の対戦相手は優勝候補・大阪桐蔭を破り勢いに乗る下関国際高校……。
本書は、不祥事で誰もなり手のいない同校野球部監督に就任し、短期間で全国の強豪へと導いた坂原秀尚監督の苦心の指導者生活を紐解く。
2005年8月、就任初日にグラウンドに顔を出すと、ピンポン玉と練習用の細い木製バットで“ピン球野球”に興じる選手たちに遭遇。雑草だらけのグラウンドで、無気力な表情を浮かべる選手たちを見て、「大きな目標に向かう野球部にしなければ、生徒、学校が変わらない」と直感し、「日本一になる」と宣言。が、その練習の厳しさに退部者が続出した。
2008年に、会長旗争奪大会で念願の公式戦初勝利を挙げると、09年夏に県内8強、11年夏に同4強に食い込むなど着実に力を付けてきた。17年夏には初の甲子園出場を果たす。だが、甲子園では初戦で三本松に4対9で敗戦。試合時間1時間39分は同年の甲子園で最短だった。「甲子園用の戦い方を作らないといけない」と痛感させられたと坂原は述懐する。
3季連続で出場した18年夏の甲子園では、初戦で花巻東を下し、悲願の甲子園初勝利。勢いそのままに8強まで勝ち進んだ。そして、記憶に新しい2022年の夏には、過去最高の甲子園準優勝に輝く。
坂原監督は「下関国際は負けから強くなってきたチーム」と常々語る。何度も弾き返された公式戦の壁、2大会連続で初戦敗退した甲子園。敗戦から学び、その悔しさを原動力に野球に向き合うのがチームの伝統となっている。甲子園の決勝に進出したことで、その年に全国で1チームしか味わえない「甲子園の決勝での負け」を経験した。この悔しさをどう今後につなげていくのか、本書ではそのビジョンを描いていく。
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