勝手に決定!今年一番面白かった野球本「2024年野球書店大賞」

毎年恒例!「野球書店」店主が2024年に読んだ野球本の中で一番面白かった一冊を勝手に選定!『2024年野球書店大賞』1作、次点4作を勝手に発表いたします!

年々、面白い野球本と出会うための本屋さんが減り続けています。だからこそ「野球書店」は面白い野球本の発信を続けています。
今年もたくさんの面白い野球本が発売されました。それでは今年もっとも面白いと思った野球本、5冊を発表させていただきます。

【大賞受賞作】

「虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督」

村瀬秀信/集英社/1,980円

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「岸一郎」という90年にも及ぶプロ野球の歴史に埋もれていた人物に光を当て、改めて検証してみるという題材、テーマがまず面白い。そこに軽妙洒脱な「村瀬節」が掛け合わされるのだから面白くなるのも必然だ。
前半はまるで神田伯山の講談を聞いているかのようなテンポと痛快さ。グイグイと話しに引き込まれるが、後半からは文体がガラリと変わり、ある人は「横溝正史のようだ」「沢木耕太郎だ」と言う(しかしながらも幕末を「〝リアル侍ジャパン〟がいた時代」と表現する村瀬節は健在)。
これは阪神タイガース版『ファミリーヒストリー』。阪神球団に脈々と流れる『虎の血』とは何なのか!?
2024年を代表する一冊として、勝手ながら今年の野球書店大賞に選定させていただきました。

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【次点4作品】

「2004年のプロ野球 球界再編20年目の真実」

山室寛之/新潮社/1980円

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球団の歴史が終わり、新しい球団の歴史が始まるとき、山室氏の筆が走り出す。「1988年のプロ野球」に続く、山室氏による「〇〇年のプロ野球」シリーズ第二弾。20年の時が過ぎ、いま明かされる球団合併、消滅、新規参入の舞台裏。
この年の騒動を振り返るとき「たかが選手が」コメントにより、先日亡くなった渡邊恒雄氏が批判の的になることが多いが、この本を読むと球団の合併、1リーグ制へと突き進んでいた黒幕はむしろオリックスの宮内義彦オーナーだと印象が残る。また90年代のパ・リーグ覇権を争った西武とダイエーの落日、小久保裕紀がなぜ巨人へ移籍したのかなど、激動の1年となった20年前を振り返ることができる良書。
次に筆を走らせるのは何年のことだろうか? 氏には「プロ野球界の柳澤健」の称号を差し上げたい。

「高校野球と人権」

中村計・松坂典洋/KADOKAWA/2090円

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「高校野球×ノンフィクション」の分野では一番の書き手であろう中村計氏と、元高校球児でもあるという弁護士・松坂典洋氏の二人による高校野球と人権の話し。小難しく見えるテーマだが、例えば昨年の慶應義塾高校の甲子園優勝以来、ネットやメディアなどでは高校球児の頭髪について議論となることも多いが、この本は高校野球において「これって人権的にどうなの?」という中村氏の抱く素朴な疑問を、松坂弁護士が法的な面からの問題点などを指摘していくという、テンポの良い対話形式で綴られている一冊だ。
高校野球を指導する全国3700校の監督、部長は少なくとも「最低限の知識」としてこの本を読むことをオススメしたい。もちろん、私のようなただの高校野球ファンが読んでも学びは多い。小難しいテーマに見えるが、読み物としてももちろん面白い一冊だ。

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「巨人軍vs.落合博満」

中溝康隆/文藝春秋/1980円

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落合も今年でもう71歳になる。今や元巨人の選手でもなく、元三冠王でもなく、中日に黄金時代をもたらした「名監督」という枕詞がもっともしっくりくる気がする。巨人時代の落合の記憶は薄れていく一方だ。
だからこそ、この本で巨人時代の落合を振り返れたことで「あー、そうだった」「そんなことあったなー」と自分の記憶と会話をするかのようにページをめくることができた。懐かしくもあり楽しい読書となった。
それにしても、誰一人インタビュー取材をすることなく、当時の膨大な雑誌記事、書物を読みあさって一冊の本に仕上げている著者の中溝氏の労力に感服する。当人達に話を聞いたほうがもはや早い気さえする。
巨人ファンではなくても、落合ファンならばぜひ読んで欲しい一冊。

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「慶應高校野球部:『まかせる力』が人を育てる」

加藤弘士/新潮新書/902円

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「外から見ているほど慶応の野球部は簡単ではない」ということを、2019年から2022年までの、全国優勝の礎を築いてきた歴代キャプテン達に話を聞いている。この話が実に面白い。
幼稚舎(小学校)から名門である慶応ゆえ、内部から進学した部員(恐ろしく家柄が良い)、一般入試を突破した部員(恐ろしく学力が高い)、推薦入学した部員(恐ろしく野球が上手い)と、野球のレベルが様々。みな学力もプライドも高いがゆえ「チームで一つになる」という難しさを毎年抱えている。こんな面倒くさい連中を毎年マネジメントしないといけない森林貴彦監督の大変さがよく分かる。
慶応を批判する人間の常套句が「そりゃ慶応だからできること」「慶応だって推薦で選手集めてるじゃないか」だが、慶応だからこそ、そんな単純な話ではないのだ。
ちなみに最終章の『仙台育英・須江監督の目』も、敗軍の将から慶応はどのように見えたかに迫っており、ここもかなり面白いのでオススメしたい。

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