暴力と強さは比例しない!

なぜ野球の現場から暴力がなくならないのか?
野球の現場に暴力が発生してしまうメカニズムを、40年近く前に「上下関係の厳しさを表す偏差値のようなものがあれば55くらい」だった立教大学野球部で身をもって体験してきた著者が様々な角度から考察しています(明治、法政、早稲田はもっと高偏差値。東都大学リーグはもっと上だったそうです。今はそんなこともないと思いますが)。どれもなるほどと頷けます。

一方で、暴力や厳しい指導を用いなくても強い高校が存在します。一昨年の神宮大会王者の札幌大谷高校、暴力事件から1年間の対外試合禁止を受けて、厳しい指導から方針転換して甲子園ベスト4という結果を残した済美高校の事例なども紹介されています。

店主が一番面白く読ませていただいたのは、学法石川高校の佐々木順一郎監督の章です。仙台育英高校野球部の前監督と紹介した方がピンとくるかもしません。甲子園春夏19回出場、通算29勝の実績を誇りますが、指導方針は非暴力、完全放任主義。「あそこは緩すぎる」と批判もされ、不祥事で謹慎処分を受けたこともありますが、それでも「何かあったら、俺が責任をとるから」と子ども達に全てを任せてきたそうです。

「ゴルフでいなくなるけど、大丈夫? 俺は遊びに行くから、みんなも休んでいいよ」
そんなことも正直に子ども達に話すそうです。部員と監督との関係の良さが窺えますね。これでチームが弱いのであれば話にならないのですが、甲子園準優勝2回を含む前述の強さも兼ね備えています。
この監督さんの許で野球ができる子ども達は野球が楽しいでしょうし、とても幸せだと思います。店主の息子も佐々木監督の許で野球をやらせたい、そんなことを思いました。ちなみに息子はまだ3歳です。

本書は暴力や厳しすぎる指導が蔓延る野球界を批判しているだけの本ではありません。そのような問題がなくならない野球界の現実を直視しつつも、令和の時代の野球界はどうあるべきかという示唆にあふれています。野球をやっている子を持つ親御さん、そして志ある指導者の方にぜひ読んで頂きたい一冊です。

元永知宏
イースト・プレス
1650円(Kindle 1485円)

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