【感想】「なぜ日本人メジャーリーガーにはパ出身者が多いのか」

伊東勤が監督だったら中日が優勝していたのか!?

「なるほどなぁ」

この本を読みながら右膝半月板を損傷するほどに何度も膝を叩きました。
やはりデータに裏付けされた話は説得力がありますね。

例えば、著者のお股ニキ氏をtwitterで発見(?)したダルビッシュですが、昨年はあんまりパッとしなかった印象があります(よね?)。そんなダルビッシュをお股ニキ氏は「(今季は)故障なく投げぬけば日本人初のサイ・ヤング賞も見えてくるだろう」と評価しています。その根拠は昨シーズン後半戦の「SIERA」にあるといいます。
SIERAとはSkill-Interacvive Earned Run Avarageの略で、「ピッチャーが自分でコントロールできない要因を排除し、そのパフォーマンスを数値化したもの」とのこと。この数値が昨シーズンの後半戦ではジャスティン・バーランダーやゲリット・コール(共にアストロズ)のサイ・ヤング賞候補と互角の数値を叩き出したというのがその理由らしいです。

なるほど、それは期待できますね。説得力ありすぎます。

ちなみに田中将大と大谷翔平についてはこのように評しています。

▼お股ニキ氏の田中評
昨季途中からスライダーの曲げ幅を大きくした結果、スライダーの指標は上がったがスプリットの角度がずれたり回転数が上がったりして落ちが悪くなった。その結果、スライダー一辺倒になり3回り目くらいから打たれやすくなった。相手に山を張られたら攻め手がなかった。「セイバーメトリクスの落とし穴」にハマった。

▼お股ニキ氏の大谷評
ストレートの質と制球に課題。制球が悪く基本的に真ん中に投げ込んでいるだけ。回転数や回転軸の傾きも中途半端でストレートの指標は悪い。そのため少し抜いて投げると打たれるので常に全力で投げなければならず燃費の悪い投球をしている。また常に160キロを投げてスプリットも大きなスライダーも交えれば肘の負担が大きいためトミージョン手術は必然の結果。今後はストレートの質の改善や制球を身につけるフォームや球種を求める必要がある。

なんて分かりやすく説得力のある指摘なのでしょうか。現役選手もお股ニキ氏にアドバイスを求めるという理由もよくわかります。

ちなみに今後メジャーで活躍が見込まれる選手は投手なら有原航平(日本ハム)、野手は鈴木誠也(広島)の名前を真っ先に挙げています。理由(もちろんふんだんなデータに基づかれた)は本書を読んでください。きっと納得されるはずです。

個人的にこの本で一番面白かったのは「監督WAR」というお股ニキ氏が独自に算出したデータです。WAR? 確かそんなプロレス団体を天龍源一郎が昔立ち上げていましたが、WARとは平たくいうと、「他の選手と比べてどれだけ勝利数を個人で貢献できたかを表す指標」のことで、この指標をお股ニキ氏が色々とコネコネすると(本書ではしっかりと解説していますが説明が面倒なので割愛)、2014年から19年のプロ野球の「監督WAR」が算出されました。つまり、どの監督が実際の戦力値から導き出される予測勝利数以上に采配力で勝利数を上積みできたかが可視化されたのです。

このデータによると、上記6年間でダントツの数値を叩き出した名将がいました。それはロッテで指揮をとっていた伊東勤氏です。とにかく本書を読んでいただければわかるのですが、圧倒的な数字を叩き出しています。監督に就任した際に「最高の補強はオレ」と言っただけのことはあります。
ロッテ在任期間中の監督WARが平均9.64(実際の戦力値から導き出される見込み勝利数よりも9.64勝上積みさせた)、昨年の中日の勝利数が68であるから単純に伊東勤が監督をしていれば77.64勝していた計算になります(ちなみに与田監督の監督WARは-1.80)。優勝した巨人が77勝ですので、伊東監督であれば中日が優勝していた可能性が高ったということになります。

なぜ彼が中日でヘッドコーチに甘んじているのか理解ができません。中日グループは一刻も早くこの本を読まなければいけません!

そんなわけで、とても面白く説得力のある一冊でした。
続編にも期待大です。

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