今月の1冊!「敗れても 敗れても ―東大野球部『百年』の奮戦」

「敗れても 敗れても」

2019年1月に読んだ野球本の中から特に面白かった1冊を紹介します!

「敗れても 敗れても ―東大野球部『百年』の奮戦」

(著者:門田隆将/出版社:中央公論新社/価格:1728円)

 

【店主の感想】

東大野球部を応援するために、神宮球場に足を運びたくなる一冊!

昨年の秋からのらりくらり読み続けようやく年明けに読了。

東京大学野球部のイメージを問われれば、
「頭が良いけど弱い」
「他大学にとってはボーナスステージ」
ただそれだけだった。

しかし、本書を読むと、
「東京六大学リーグのどこの大学よりも勝利に飢え、勝利に対する執念を持っている」
「神宮球場で野球をすることに対して他のどこよりもピュア」
という新しいイメージを持つようになった。

本書の前半は、日本に野球が伝わった当初は東京大学の予科である一高が最強であったこと。終戦時の沖縄知事であり「島守」「戦場の知事」として沖縄県民に愛された島田叡という東京大学野球部OBがいたこと。NHKニュース9のキャスターでおなじみの大越さんが大学日本代表にも選出されるほどの実力だったことなど、今年で創部100周年を迎える東京大学野球部の歴史を中心に構成されている。
後半では連敗記録の更新、監督、選手たちの試行錯誤など、主に東京大学野球部の苦悩、試練を中心に構成されている。

前半も新しい発見に溢れ面白かったのだが、やはり興味を惹かれたのは後半である。
リーグ戦の連敗記録を84まで伸ばしていた東大野球部。そこに至るまでの間、入学から卒業まで在学期間中に一度も勝利を経験することがなかった学年がある。彼らがリーグ戦で残した記録は80戦80敗。

「八十回もやって勝てないというのは、もう悔しいというレベルではないですね。悔しさが積もりに積もって八十回。単純に八十回積もっても一回勝てばそれを吹き飛ばせるものだと信じていましたが、その吹き飛ばす機会を僕たちはもう得ることができません。だから、気持ちというか、”魂”が神宮に取りついて離れられないんです」

そう語っているのは当時の副将の初馬眞人氏。

どうやったら勝てるのか? どうすれば連敗は止められるのか? 自分たちのどこがダメなのか? このまま連敗を止められなければ東京大学野球部が東京六大学リーグにいる意味さえ問われかねない。後輩たちも苦悩した。

連敗ストップへのきっかけを作ったのは新キャプテン飯田裕太の無謀にも思えた目標設定だった。

「勝ち点3をめざす」

これまで1勝もできずに連敗記録を更新しているチームに対して、勝ち点3を目指すというのである。2勝で勝ち点1であるから、それは「個人個人に対して、リーグ戦で6勝できるチームに必要な技術レベルを要求する」という宣言だった。

現在の戦力でどうやって勝ち点3(6勝)をとるか? 選手たちは考え始める。そしてチームの空気が変わりはじめた―

最終的に現在日本ハムファイターズの宮台康平らの活躍もあり東京大学野球部は不名誉な連敗記録を「94」でストップさせる。そして1勝にとどまらず法政大学野球部から勝ち点まで奪ってみせた。勝ち点1を奪った試合の描写はまるで野球小説を読んでいるようでもあった。

後輩たちの偉業を嬉しく思いつつも、「どうして俺たちにはそれができなかったのか…」と卒業後も「魂が神宮球場から離れない」OBたちの苦悩、後悔には、東大野球部員たちの野球にかける本気さ、純粋さが伝わってきた。

これまで東京六大学リーグの試合をふらりと見にいったとき、対戦チームの一方が東京大学だったときは「ハズレの試合に来てしまった」という感があった。
しかし、この春はむしろ東京大学の試合を見に行きたいと思う。

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